奈良県には東大寺の「奈良の大仏」や鹿で有名な「奈良公園」をはじめとする、さまざまな観光資源が存在します。五重塔で知られる「興福寺」も、奈良の観光を語るうえで外すことのできない観光名所といえるでしょう。そんな興福寺を観光するうえで、決して素通りできない仏堂があります。それが南円堂です。西国三十三所の九番礼所として知られており、観光客で絶えない人気スポットです。南円堂の扉は常に閉ざされており、10月17日の大般若経転読会の日のみ開かれます。
歴史
興福寺の南円堂は、西暦813年に藤原北家の藤原冬嗣によって、父である内麻呂追善のために建設された八角堂です。現存する建物は西暦1789年に再建されたものとなっています。創建されたころの本尊は、もともと興福寺講堂に安置されていた不空羂索観音像でした。この不空羂索観音像は西暦748年に、その前の年に没した藤原房前追善のために夫人の牟濡女王と子息の藤原真楯が造率したものでした。現在の不空羂索観音は西暦1189年に完成した坐像です。
見どころ
興福寺の南円堂には、国宝の木造不空羂索観音坐像と、同じく国宝の木造四天王立像が安置されています。これらはいずれも非常に貴重な仏像ですが、基本的に年に一度しか南円堂の扉が開かれないため、めったに拝めるものではありません。しかし仏像を拝むことができないにも関わらず、数多くの観光客が南円堂に足を運びます。その理由の一つが、南円堂の前に生える「南円堂藤」です。南円堂藤は南都八景の一つにも数えられており、毎年多くの観光客を魅了する美しい花を咲かせます。