正暦寺と奈良県奈良市にある寺院です。奈良と天理の間の山間に位置しています。本尊は薬師如来で、山号は菩提山です。「錦の里」とも呼ばれるように紅葉の名スポットとしても有名で、秋には多くの人々が訪れます。日本酒発祥の地ともされており、「日本清酒発祥の地」という碑がたっているのです。所在地は奈良市菩提山157で、アクセスはJR奈良駅、近鉄奈良駅から米谷町行のバスに乗車、およそ23分で「柳茶屋」バス停に着きますので、下車し徒歩30分です。
歴史
正暦寺は正暦3年、西暦で992年に一条天皇の発願によって関白である藤原兼家の子、兼俊僧正が創建しました。かつては報恩院以下86坊の堂塔伽藍が立ち並ぶ大きな寺院だったのですが、後の治承4年、平重衡によって「南都焼き討ち」が行われ、これによって焼失してしまったのです。建保6年になると同じく南都焼き討ちで荒廃してしまった興福寺の再建に尽力した大乗院院主の信円僧正が、その地位を退いたのちの隠遁先として正暦寺を選び、再興されました。明治になり廃仏毀釈によって荒廃しましたが、石垣などからかつての威容が偲ばれます。
見どころ
正暦寺の見どころは、もちろん本尊の薬師如来像をはじめとする重要文化財の数々です。しかしそれら重要文化財に見劣りしない、注目すべき碑があります。「日本清酒発祥の地」の碑です。日本で最初の清酒、つまり世界初の日本酒とも言われる「菩提泉」がこの地で製造されていたのです。菩提泉は正暦寺の境内を流れる菩提仙川の清水、菩提酛という酒母・製法をもって造られた僧坊酒であったとされ、当時の日本で最も上質、かつ高級な酒であったとされています。日本酒を愛でる酒飲みにとって、正暦寺はまさに聖地といえるでしょう。