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都会の真ん中にありながら、情緒を残す新宿区・西早稲田。神田川にかかる面影橋周辺は、京都の鴨川、金沢の犀川と並び「日本三大染物地」に数えられた染物の聖地です。かつては町の一角すべてに染物屋が軒を連ね、職人の熱気で満ちていました。

東京・面影橋
東京・面影橋

その歴史を今に伝える富田染工芸の仕事場は、新宿区のミニ博物館に指定されています。受け継がれてきた貴重な道具は、職人の手入れを重ねつつ今も現役。使い込まれた道具の一つひとつに、伝統と誇りが静かに息づいています。

東京・面影橋

「いわれ小紋」が紡ぐ
新たな時代への挑戦

大名の裃から始まった江戸小紋を、守り続ける富田さん。そのルーツは、お殿様と同じ柄を禁じられた庶民が奢侈禁止令の目をかいくぐり生み出した、独自の「いわれ小紋」にあります。遠目には無地、近づくと緻密な柄が浮かぶ江戸小紋の遊び心。富田染工芸はかつて、百貨店の前身となる呉服屋を通じて、着物のトレンドを次々と発信してきた歴史を持ちます。

当時の最先端の流行を支えてきたのが、独自の型紙を用いた「型染め」という技法。岐阜などで作られた和紙を柿渋で固め、三重県鈴鹿の職人が彫り上げる「伊勢型紙」。この型紙を使い、一ミリの狂いもなく正確に模様を染め上げる技術が、継承されてきました。現在も、12,000枚もの膨大なコレクションが大切に保管され、洗練された技を今に留めています。

「着物だけでは、小紋を残せない」と、富田さんは財布やスカーフ、エコバッグ染め体験など、今を生きる人々に認められる形でその魅力を発信しています。お殿様の文化から庶民の遊び心、そして現代の日常へ。やがて海を越え、時代を旅する江戸の粋を、未来へ繋ぎ続けています。

東京・面影橋
東京・面影橋

もともとは着物の柄の小紋、その取り入れ方を時代に合わせて進化させているエネルギーに、圧倒されました。古い殻を破りながらも、ブレない。富田さんや工房の方々の小紋への向き合い方そのものが、何より美しく、粋だと感じました。ベルトラ 武部

富田染工芸 5代目 富田篤

富田染工芸 5代目 富田篤

着物の江戸小紋と聞くと敷居が高く感じるかもしれませんが、その柄にはいつの時代も、「粋な遊び心」にあります。江戸小紋の柄は、型紙や職人の技によって、代々守られてきました。現代の皆様に使っていただき、楽しんでもらえて初めて、未来へと生きていくと思います。スカーフ一枚、エコバッグ一つから、ぜひ気軽にその魅力に触れてみてください。面影橋の工房で、皆さまとお会いできるのを楽しみにしています。
富田染工芸職人一同